東京在住でイタリア出身、ミレニアル世代の建築家アンドレア・サモリーがキュレーターとして初企画。自身の立体作品の他、日本とイタリアから4名のアーティストのコレクティヴ展です。
出展作家:
ミッチェル・バッゾリ Michele Bazzoli
マテオ・ガッティ Matteo Gatti
広垣彩子 Ayako Hirogaki
フランチェスコ・パセリ Francesco Pacelli
アンドレア・サモリー Andrea Samory
2019年10月23日(水)〜10月27日(日)
11:00-18:00 (最終入場17:30)
入場料 400円〜(飲み物付き)
展示に寄せて:
私たちは集団的ヒステリーの時代に生きている。
もはや明るい、普通の未来像を描くことは不可能だ。待ち構えるのは原子力による大量虐殺か地球温暖化による大災害か。一方ではAIの発展による全自動社会か更なる宇宙開発か…。両極端な未来には中間点が存在しない。こうしたビジョンは現代のメディアによって形成されてきたという一面もあるだろう。
ミレニアル世代は、驚異的な技術革新や歴史的な大惨事を日常のように眺めながら成長してきた。遠い未来への夢を現代の出来事にヒステリックに重ね合わせる。この世代の未来への展望を言い換えれば、こんな具合だ。
「未来のロボットがどんなに素晴らしいか想像してみて。第三次世界大戦が5年以内に始まったり、オーバーヒートした地球が壊滅しないように、願いながら」
未来へのこの両極端な展望は、ホラー映画の鑑賞時に起こるアドレナリンの急上昇とパラレルに存在する。ホラー映画ではジェットコースターのようなその展開に中毒的な興奮を覚えるのだ。登場人物が絶望的か楽観的かは大した問題ではない。
ホラー映画のサブジャンルのひとつである「ボディホラー」は、ミレニアル世代が毒されているヒステリカルな状態を完全に視覚化している。数多くの「ボディホラー」の映画の中でも、ミレニアル世代が誕生した1980年代に公開され、このジャンルの金字塔ともいうべき二つの日本映画、大友克洋の「AKIRA」と塚本晋也の「鉄男」は、人間と機械が物理的に区別できないディストピアの世界を描ききっている。究極の力への探求と人間社会における不可避の特性として「自然発生した」身体の変形に焦点を当てているのだ。
「Tetsuo’sBody」は、ミレニアル世代が描くヒステリカルな未来像を、形あるリアリティとしてフォーカスした企画展である。私たちが想像する未来とは、一体どんな造形で、どんな塊として示されるだろう?それがディストピアかユートピアであるかはさておいて…。
本プロジェクトは、それ自体が視覚的な「ポストユートピア」ともいえる都市、東京の郊外で展開
される。東京というこの巨大都市は戦後から驚異的なペースで拡大と発展を続けてたが、今となっては古い大きなコンクリートの塊体に過ぎない。過去に想像された未来の顛末である。
この掻き立てる文脈の中で、本展における彫刻作品群は、過剰生産と終わりなき拡張へのヒュブリス*1として結びつき、不可避の異常として出現する。「器官なき癌の身体は、自己同一のパターンの無限の複製のパターンに捕らえられる」*2
出展作品群は、不安やヒステリーを将来のビジョンから除外することができない、今日における状況を具現化している。常時炎症状態にある人間の器官が腫瘍を発症する可能性は科学的にも高い。東京という都市空間における真っさらで無機質な表面は、異形の自然発生した合成物体群と突如として並置される。
本展の作品のほとんどは非具象的、非常に不可解で謎めいた造形である。その謎の造形群は映画やアート、印刷物を通してミレニアル世代に大きな影響を与えた、自然と人工物のハイブリッドモンスター、AKIRAや鉄男へのオマージュであると本展は公言する。
*1 ドゥルーズ、ガタリ共著「千のプラトー 資本主義と分裂症」より
*2 hybris ヒュブリス :ギリシア語で傲慢を意味する。他人の権利を侵し、神々の力を侮ることで、ホメロス以来人間がこのように自己の分限をこえることが神々の怒りを招くとされ、悲劇詩人、歴史家では、そこに人間の破滅の一因が求められた。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
翻訳:芝辻ぺラン詩子(merdre)
アンドレア・サモリー https://andreasamory.com/
イタリア出身、東京在住のアーティスト、建築家
東京大学大学院工学系研究科・工学部隈研究室 研究生。隈研吾建築都市設計事務所に勤務。
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